2015年の発売以来、どんどん評判が広がり本屋大賞にノミネートされ55万部を超えるベストセラーとなっている「コーヒーが冷めないうちに」。
なんと作者の川口俊和さんはこれがデビュー作です。
過去に戻れると評判の喫茶店にきた4人の女性が限られた時間の中で過去に戻って会いたい人と再会し、お互いに言うことができなかった本当の気持ちを伝えていく話です。
4つの短編で構成されていますが、それぞれの話につながりがあり本一冊でひとつの物語になっています。
なお、「コーヒーが冷めないうちに」はオーディオブックでも楽しむことができます。
活字が苦手な人、読書を効率よく取り入れたい人、オーディオブックデビューしたい人は試してみてください!
Contents
作者の川口俊和さんとは?
川口さんは大阪府茨木市の出身です。
何月何日生まれかは非公開なので分かりませんが、1971年生まれなので誕生日を過ぎてなければ46歳です。
劇団音速かたつむりで脚本と演出を担当していて、現在は1110プロデュースを主宰しています。
「コーヒーが冷めないうちに」はもともと1110プロデュースの舞台で公演していた物語です。
それを編集者が見に来ていてとても感動し、小説として発売することを持ちかけたようです。
いきなりベストセラーを出すくらいだから小説家を目指していた人だと思ってましたが、舞台を手がけている方なんですね。
また、舞台版「コーヒーが冷めないうちに」は第10回杉並演劇祭大賞を受賞していて、舞台としても評価の高い作品です。
「コーヒーが冷めないうちに」のあらすじ
お願いします、あの日に戻らせてください――。
過去に戻れる喫茶店で起こった、心温まる4つの奇跡。(商品紹介より引用)
物語の舞台は喫茶店「フニクリフニクラ」
この喫茶店には、とある席に座ると望んだとおりの時間に自由に行くことができるといううわさがありました。
そんなうわさがあるのだから大勢の人が過去に戻ろうと訪れるのですが、ほとんどの人は過去に戻ることなく店を後にします。
なぜならいくつもの面倒なルールがあって、それをすべてクリアしないと過去に行くことができないからです。
そのルールはこのようなもの。
1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない人には会えない
2.過去に戻って何をしても現実を変えることはできない
3.過去に戻れる席にはいつも座っている客がいて、その客が席を離れた時しか席に座れない
4.過去に戻っても席を移動することはできない
5.コーヒーをカップに注いで、そのコーヒーが冷めてしまうまでの時間しか過去にいられない
大まかに言えばこの5つですが、他にもいくつか面倒なルールがあります。
この喫茶店に来て過去に戻ろうとする人は、過去に戻って現実を変えようという目的がある人ばかりです。
しかし過去に戻っても現実が変わらないのではなんの意味もありませんし、面倒なルールがあまりにも多いため過去に戻った人はほとんどいません。
物語の中では4人の女性が時間を移動しますが、過去は変えられないことを理解したうえで、会うことができなくなった人にもう一度会いに行きます。
4つの短編
この小説は4つの短編で構成されています。
それぞれのあらすじを紹介します。
第1話「恋人」 結婚を考えていた彼氏と別れた女の話
医療系大手IT会社で働く清川二美子(きよかわふみこ)には同じく医療関係の会社でシステムエンジニアをしている賀田多五郎(かただごろう)という3歳年下の彼氏がいました。
ある日「大事な話がある」と五郎に呼び出された二美子は、仕事でアメリカに行くことになったこと、その出発が数時間後でだということを突然告げられます。
五郎はちゃんとした説明もないままその場を立ち去ろうとするので、二美子は怒りをぶつけてけんか別れになってしまいました。
本当はアメリカに行ってほしくないのにそれを言えなかったことを後悔して過去を変えようと喫茶店に来ますが、現実を変えられないというルールを知って愕然。
それでもいいからと過去に戻ってもう一度五郎に会いに行ったところ、今まで二美子が知らなかった五郎の気持ちを知ることになります。
はたして五郎がずっと抱えていた気持ちとは?
第2話「夫婦」 記憶が消えていく男と看護師の話
フニクリフニクラでいつもコーヒーを飲んでいる房木(ふさぎ)。
過去に戻れるという都市伝説のことを知っていて、過去に戻って妻に渡しそびれた手紙を渡そうとしています。
なお、妻がいたことは確かですが今どこにいるのかも名前も思い出せないといいます。
房木の妻は喫茶店の近所の病院で看護師をしている高竹(こうたけ)。
二人は夫婦なので、高竹は旧姓です。
ある日高竹が喫茶店にいる房木を迎えにきたところ、「どこかでお会いしたことありましたっけ?」と言われてしまいます。
房木は若年性アルツハイマーを発症して記憶障害を起こしていました。
そのため妻がいることは覚えているのに目の前にいる高竹が妻だと分からなくなっていたんです。
看護師としても接していた高竹はこの日がくることを覚悟していましたが、房木に忘れられてしまった現実を受け止めきれず大きなショックを受けます。
しかし房木が自分に渡そうとしていた手紙があることを知った高竹は、まだ記憶が残っている頃の房木から手紙を受け取るため過去に戻ります。
房木が手紙で妻である高竹に伝えようとしていたこととは?
第3話「姉妹」 家出した姉とよく食べる妹の話
喫茶店の近所で人気のスナックを経営している平井八絵子(ひらいやえこ)。
仙台で創業180年の老舗旅館「宝蔵(たかくら)」が実家ですが、旅館を継ぐことを拒否して勘当同然で家出していました。
代わりに妹の久美(くみ)が女将として旅館を継いでいました。
久美は家出した八絵子に月に一回は会いに来て、実家に戻るように説得していました。
しかしここ1,2年は八絵子が迷惑がって久美と会おうとしていませんでした。
久美がどれだけ会うことを拒否されても説得しにきていたのは、ずっとやりたいと思っている夢があったからです。
その夢とは一体・・・?
第4話「親子」 この喫茶店で働く妊婦の話
フニクリフニクラのマスターである時田流(ときたながれ)とウエイトレスをしている時田計(ときたけい)は夫婦です。
計は女の子を妊娠しているのですが、生まれつき心臓が弱いため出産をすると心臓への負担が大きく母子ともに無事でいられる保障がありません。
計は死も覚悟して赤ちゃんを産むことに決めますが、自分が娘の成長を見届けられないことに悲しみを感じていました。
ここまでの3つの話ではみんな過去に戻っていますが、この喫茶店では望んだとおりの時間にいくことができるため未来にも行くことができます。
ルール上ひとつ大きな問題があるので今まで未来に行った人はいませんが。。。
計はその問題をクリアすることができたので未来に行き、15歳になった娘に会いに行きます。
「コーヒーが冷めないうちに」の感想
この本を読んで感じたのは人と人はいかにすれ違いが多いのかということです。
特に1話と3話は相手の考えていることを自分の思い込みで判断してしまったためにすれ違った二人の話です。
4話は未来に行く話なので違いますが、2話でもお互いの気持ちを伝えられない状態になってしまうことですれ違っています。
亡くなったわけではないですがアルツハイマーで忘れられてしまったことで、病気になる前のようには会話できなくなりました。
過去に戻った登場人物たちは、現在の世界に戻ってからは全員幸せそうな表情で現実を生きるようになっています。
過去に戻っているのはコーヒーが冷めるまでの短い時間(しかもコーヒーはぬるい)。
その間ほんの少し会話をしただけで過去から戻ってきてからの現実が変わってしまっています。
幸せと苦しみの境界線はほんのちょっとの些細なことなんでしょう。
二美子は言葉を選んで、
「……これから、未来のことは?」
と、聞いた。
数は、二美子に向き直り、
「未来はまだ訪れてませんから、それはお客様しだいかと……」
と、初めてニッコリと笑顔を見せた。
過去に戻ることはできないし、どんなに後悔しても過ぎてしまった過去を変えることはできません。
しかし今ある現実とこれからの未来は自分の力で変えていけます。
人生において人とつながっていられるのは、ほんのちょっとの時間です。
いつなくなるか分からないものなので、後悔しないように大切にして生きていこうと思います。
2018年9月映画化が決定!

コーヒーが冷めないうちには2018年9月21日に映画が公開されることが決定しました!
主演は最近は朝ドラ「ひよっこ」のヒロインとしての活躍が印象深い有村架純、監督はドラマ「アンナチュラル」の演出を手がけた塚原あゆ子です。
主演の有村架純さんのコメント
「ある喫茶店に勤める、普通にしてどこか孤独な掴みどころのない女性を演じます。自分が淹れるコーヒーで、人を過去に戻すことができる。自分にしかできない自分の仕事を、彼女はどう感じているのか、人々の人生に触れるたび、自問自答しながら彼女の瞳の奥にあるものが見えるように、繊細に紡いでいければいいなと思います。素晴らしい役者の皆さんと影響し合い、素敵な作品となるよう、頑張ります。」
監督の塚原あゆ子さんのコメント
-1杯のコーヒーが冷めるまでの、ほんの短い時間でも、人生は変わる-
恋人、夫婦、姉妹、親子。誰もが共感できる、優しい人間ドラマが詰まった原作です。更に映像ならではのエンタメと個性豊かなキャストの笑いと涙を、丁寧に詰め込 みたいと思います。ぜひ、大切な人と観に来て下さい。
原作の川口俊和さんのコメント
22歳から舞台の演出家として活動してきた僕にとって、自分の作品が映画になることは、夢ではありましたが、まさか現実になるとは思いもよりませんでした。この小説を愛してくださった読者の皆様と、本を店頭に並べていただいた全国の書店員の皆様の熱い想いのおかげだと思っています。でも、もしこれが「夢」なのだとしたら、せめて銀幕で流れるエンディングを見届けるまで冷めないでほしいです。
「コーヒーが冷めないうちに」はオーディオブックで聴ける


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