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富山の吹奏楽団に所属するTuba吹き。音楽を演奏するのも聴くのも好きな「no music no life」な人間。スピッツファン歴は12年。小心者でビビリながらも興味のあることは何でもやってみるタイプ。

佐藤正午「月の満ち欠け」のあらすじと感想①。『前前前世』がよく似合う大人の純愛物語

こんにちは、リュウです。

2017年上期に直木賞を受賞した佐藤正午さんの「月の満ち欠け」を読みました。

 

このタイトルはどういうことなんだと不思議でしたが、読んでみるとめちゃくちゃキレイなタイトルだということが分かります。

 

 

 

あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──

目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか?

三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。

この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

 

(Amazonより引用)

 

 

三人の男と一人の女性を巡る生まれ変わりの物語。

設定はそこまでめずらしいものではないですが、読んでいて不思議と引き込まれていきました。

 

そして読み終えたとき、いや読んでいるときから感じてましたがラストシーンを読んでこう思いました。

 

これ、『前前前世』 そのものじゃん 

 

 

 

 

 

 「月の満ち欠け」のあらすじ

物語は3人の男性の視点が順に入れ替わりながら進んでいきます。

そして3人が共通して関わっていくのが一人の少女です。

 

 

最初に登場するのが小山内堅。

彼は大学時代に知り合った高校の後輩でもある『藤宮梢』と交際を始めます。

小山内が卒業後に石油元売の中堅どころの企業に就職してからは遠距離で交際を続けていました。

 

やがて二人は結婚し、ほどなくして梢は妊娠。 

 生まれてきたのは女の子で、二人は娘に「瑠璃」と名付けました。

これは「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という格言に基づくものでした。

 

この「瑠璃」という名前と由来である格言は物語において重要な意味を持っています。

 

 

夫婦仲が悪いということもなく幸せな生活を送っていましたが、瑠璃が7歳を迎えたある日ひどい高熱を出して寝込んでしまいます。

風邪と思われましたが、一週間たっても熱が下がらず原因が分かりませんでした。

 

しかし一週間が過ぎると何事もなかったかのように突然良くなって瑠璃は元気を取り戻しました。

この直後から瑠璃には奇妙な異変が見られ始めます。

 

 

「・・・なんだかあの瑠璃が、急におとなしくなったみたいで」

「元気がないという意味か?」

「そうじゃない。元気がないとか、そういうんじゃない。おとなしくじゃなくて、どう言うのかな、たぶん、おとなびる?」

 

 

梢の心配を小山内はそれほど気にしていませんでしたが、その後も梢から瑠璃の異変についての話を次々聞かされます。

 

瑠璃が生まれるずっと前に流行っていて知るはずのない『黒ネコのタンゴ』を歌っていたこと

小山内にも梢にも分からないライターの銘柄をひと目で見分けたこと

ライターの石の交換方法が分かること など。

 

 

梢は瑠璃の異変を必死に小山内に訴えましたが、そのいずれも小山内は気に留めませんでした。

どこで覚えたのか不思議に思いつつも、子どもは急に成長するものだと解釈していたのです。

 

 

この時二人は知るよしもありませんでしたが、瑠璃は高熱から回復した時に前世での記憶を取り戻していたのです。

 

前世でも「瑠璃」という名前の女性として生きていて、その時彼女は27歳。

瑠璃の異変はすべて前世での記憶を取り戻したことが原因だったのです。

 

 

この瑠璃の異変までの流れを読んでいるとミステリー小説のようにも思えてきます。

しかしこの異変の理由は早い段階ではっきりしますし、ミステリー要素はそれほど重要ではありません。

 

その後前世での「瑠璃」と関係のある「三角哲彦」や「正木竜之介」が登場してからは生まれ変わってもたった一人を愛そうとする純愛物語に姿を変えます。

 

 

 

今回はここまで。

次回は感想と読んでいくつか気になったことがあるので、そのことについて考察します。