エンタ Shower満喫 ラボ

富山の吹奏楽団に所属するTuba吹き。音楽を演奏するのも聴くのも好きな「no music no life」な人間。スピッツファン歴は12年。小心者でビビリながらも興味のあることは何でもやってみるタイプ。

池井戸潤『下町ロケット ヤタガラス』のあらすじと感想。下町の心意気に胸が震える物語だった

こんにちは、読書好きブロガーのリュウです。

今ドラマが放送されている『下町ロケット2』の原作である『下町ロケット ヤタガラス』を読みました。

 

今回のドラマは『ゴースト』と『ヤタガラス』の2作による連作です。 

 

 

 

 

前作の『ゴースト』はギアゴーストの特許侵害という大きな問題を共に乗り越えるも、さらに大きな事態になりそうな伏線を残して終了していました。

 

ぼくはkindleで『ゴースト』を読んでいたのですが、続きが気になりすぎて読み終えた瞬間『ヤタガラス』のkindle版をポチリました 笑

 

 

ちなみに前作の『下町ロケット ゴースト』はAmazonのオーディオブックサービスである『Audible』で配信されていて、『下町ロケット ヤタガラス』も12月中旬から配信予定です。

 

オーディオブックはその名の通り”耳で聴く本”なので、家事、筋トレや運動中、車の運転中も読書の時間にできます。

 

Audibleは登録から30日間は無料です。

忙しくて本を読む時間がない人はオーディオブックで楽しんでみましょう。

 

【Audible】の詳細はこちら!

 

  

 

 

『下町ロケット ヤタガラス』のあらすじ

 

伊丹大の裏切り

前作でギアゴーストの特許侵害による窮地を救った佃製作所。

しかし社長である伊丹がライバル企業であるダイダロスと資本提携を決めたことによって、佃製作所とのトランスミッションの取引の話もなくなってしまいました。

 

伊丹と決別してギアゴーストを退職した島津からその話を聞いた佃は、後日伊丹に直接会いに行くこととします。

 

しかし共に協力してギアゴーストの存続の危機を乗り越えたときの面影は伊丹にはなく、どこか面倒くさそうに佃に対応します。

 

佃は同じ下町育ちとして伊丹大とギアゴーストに惚れ込んでおり、それが裏切りにたいして怒れなかった理由でもありました。

 

ですが伊丹の佃製作所への恩義も謝罪もなく、一方的に切り捨てる態度に佃はついに耐えきれなくなりました。

 

「それは、ウチとでは生き残れないと、そういうことでしょうか」

まっすぐに伊丹の目を見据え、佃は問うた。

「まあ、そういうことかな」

「ふざけるのもいい加減にしてくださいよ、伊丹さん」

 

何かがはじけ飛ぶような感覚と同時に、佃は口を開いていた。

「いままで長いこと生きてきたが、こんなふうに裏切られたのは初めてだ。いまここに至るまで、少しでもあんたのことを信じようとしてきた自分が情けない」

「それは失礼しました」

 

感情のこもらない声でいった伊丹は、面倒くさそうに盛大なため息をついた。

「どう思われようと結構。ともかく、そういうことですので。もうよろしいですか?」

 

そういうとさっさと立ち上がり、伊丹は一方的に話を切り上げたのだった。

 

 

無人農業ロボットの開発

一方、前作のラストでロケット開発から離れた財前道生は新しく『宇宙航空企画推進グループ部長』となっていました。

 

財前はロケットの技術も活かした無人農業ロボットを作り、日本の農業を救うことを目指していました。

 

「作業は昼夜問わず可能で、パソコンからの指示で納屋を出、田んぼに行き、農作業をして自動で帰ってくる。

これにより、農作業は格段に楽になり、しかも作業効率が向上して経営面積を増やせることによって、世帯収入は飛躍的に向上します。

(中略)

 

都会から農村へ。

若手の収農者を増やし、”きつい、つらい、儲からない”農家のイメージを”楽しく、豊かで、成長する”前向きなイメージへ転換することができるんです。

 

 

帝国重工のラインナップには農機具がなく、開発のノウハウも不足しています。

 

そこで財前は佃製作所にエンジンとトランスミッションの供給を依頼。

 

また、北海道農業大学で無人農業ロボットのベースとなる技術を研究しており、佃の大学時代の友人でもある野木博文(のぎひろふみ)教授にも協力を依頼して、無人農業ロボットの開発を進めようとします。

 

しかし次期社長候補である”的場俊一”が無人農業ロボットの成果を自分のものにすることを考えたため、財前は企画から外され的場が責任者に就任します。

 

さらに的場はエンジンとトランスミッションを帝国重工内で制作する方針を打ち出し、佃製作所は取引から外されてしまいます。

 

 

窮地に追いやられた佃製作所。

しかし佃は今後間違いなく進んでいく農機具の無人化に置いていかれないためにも、野木教授に協力してもらいながら無人農業ロボットの開発を続けていくことを決めました。

 

 

ギアゴーストの逆襲と帝国重工の危機

帝国重工の無人農業ロボットの開発は進み、ついに公式に制作が発表されることとなりました。

 

しかしそれとほぼ同時期にギアゴーストとダイダロスが『ダーウィン・プロジェクト』と命名し無人トラクターの開発に参入。

 

さらにかつてダイダロスの社長である重田登志行が社長をしていた重田重工が的場によって潰された過去が週刊誌の記事に載り、『ダーウィン・プロジェクト』がメディアに大々的に報じられます。

 

これらによって大企業に潰された下町の会社社長たちが宿命の相手である帝国重工に挑戦状を叩きつけるという構図が出来上がり、『ダーウィン・プロジェクト』は世論の圧倒的な指示を集めるようになりました。

 

「たしかに、この重田登志行という人の人生は壮絶なものでしょうが、帝国重工の書かれ方も酷いですね。ネットでも相当盛り上がってますよ」

(中略)

「こいつは挑戦なんて生やさしいもんじゃないぜ、ヤマ」

佃は断言した。

「帝国重工への、まさに宣戦布告だ」

 

 

 

帝国重工への取引から外れたあとも佃たちは野木のもとで無人農業ロボットの開発を続け、100回連続でノンストップの結果を出すまでになっていました。

野木は佃たちをいいチームと絶賛する一方、帝国重工については不満をもらします。

 

帝国重工は小型・中型トラクターを製造する『ダーウィン・プロジェクト』との競合を避けて大型トラクターの製造に力を入れ始めていました。

 

これは的場の方針によるもので、財前が当初目指していた日本の農業を救うという目的から大きく外れるものでした。

 

 

そんな中、岡山で行われる農業イベントの『アグリジャパン』に帝国重工の無人農業ロボット「アルファ1」の出展依頼が入りました。

 

「アグリジャパン」には同じく無人農業ロボットを制作している「ダーウィン・プロジェクト」も出展することとなっていました。

お互いに行う無人農業ロボットのデモンストレーションは、帝国重工とダーウィンの直接対決として世間の注目を浴びることとなりました。

 

帝国重工側は大きな自信をもって望みましたが、結果はこれ以上ない屈辱的な形で差を見せつけられました。

 

この結果と的場を中心とする製造部のやり方を問題視した現社長の藤間はある決断をします。

「製造部は降りろ」

(中略)

矢のような視線が的場にむけられた。

外注でいい。あの『ダーウィン』と渡り合えるような技術力のある会社に、このトラクターを託せ。

まずは市場の信任を得ることが最優先だ。

今日、地の底に墜ちた我々の信用を全力で取り戻せ。いいな」

 

 

その後、財前からの依頼を受けて再び無人農業ロボットの市場に乗り出した佃製作所。

 

裏切りや大企業のしがらみ、政治的介入などの困難の先にあったのは、下町の心意気の結晶ともいうべく結末でした。

 

 

『下町ロケット ヤタガラス』の感想

 

『ゴースト』を上回るスピード感

前作の『ゴースト』についての記事で、読者を飽きさせないスピード感のある展開を面白さのポイントとして紹介していました。

 

それは『ヤタガラス』になっても変わることがなく、次々と変化する展開が読者をひきつけ物語の没頭させられます。

 

ただ『ゴースト』のときは物語の序章的な部分も多くて、それほどたくさんの展開があったわけではありませんでした。

 

  • ギアゴーストを訪れる
  • 新型バルブを制作し、コンペに出す
  • ギアゴーストが特許侵害で訴えられる
  • 佃製作所が協力して、特許侵害の訴えに立ち向かう
  • ギアゴースト内の裏切りが発覚
  • 裁判に勝訴
  • 伊丹と島津が決裂

 

ざっくりいえばこんな感じでしたが、『ヤタガラス』ではもっといろんなことがおきていて、次から次へと問題が発生します。

 

『ゴースト』よりも多くの問題が起きているのですから、むしろ『ヤタガラス』のほうが展開が早いといえます。

 

それでも物語に先を急いだ感じはなく自然に読ませられているので、今作も安定感抜群の構成力の高さを発揮しています。

 

 

因果応報を感じさせる物語

固い言い方になってしまいましたが、『ヤタガラス』は自分のやったことがそのまま結果となって帰ってくるということを具現化したような結末となりました。

 

たとえば帝国重工の的場俊一。

彼はかつて取引をしていた重田重工の取引を打ちきり、倒産に追い込みました。

 

当時社長であった重田登志行は的場に憎しみを抱き、同じく的場によって会社を追放された伊丹とともに『ダーウィン・プロジェクト』を立ち上げ、的場を潰そうといろんなことを仕掛けます。

 

『ダーウィン』によってなかなか痛手を負わされましたが、最後には今までやってきたことがすべて跳ね返ったような決定的なしっぺ返しを的場は喰らいます。

 

また、『ダーウィン』側も無人農業ロボットの制作をしていましたが、これは①下町の技術力を見せつける②的場への復讐といった目的。

日本の農業にたいする貢献の気持ちはほとんどなかったのです。

 

それにたいし佃製作所は一貫して日本の農業を救うことを考えていました。

ラストまでその気持ちが変わることはなく、追い詰められた『ダーウィン』側にたいして佃がとったある行動にも現れています。

 

日本の農業のことを考えていたほうが勝つ。

まあそうじゃなかったら台無しなんで当たり前なんですが、日本を支えてきたのはこういった下町の心意気なんだろうなと思うと胸が熱くなります。

 

 

佃たちの奮闘が薄い

第1作から2作目までは佃製作所が技術力で戦いを挑むという形になっていました。

『下町ロケット』であれば帝国重工、『ガウディ計画』であればライバル会社と実績を重視するPMDA(医療機器を認可する機関)でした。

 

いずれも一筋縄ではいかない問題にたいして持ち前の技術力と下町の心意気で立ち向かっていくところが魅力のひとつだったと思います。

 

しかし『ゴースト』『ヤタガラス』ともにどうも佃製作所の奮闘ぶりが薄い。

『ゴースト』なら特許侵害で訴えられたギアゴーストを、『ヤタガラス』ならダーウィンに差をつけられた帝国重工を手助けする側にまわっています。

 

バルブやトランスミッションの開発をしている場面もありますが、それほど苦労もなく出来上がった感じがあって、佃製作所からは横綱相撲のような余裕がありました。

 

佃たちが困難に立ち向かい、それを読者であるぼくたちが共有し、最後に手にする成功を共に喜ぶ。

前作まではこんな感覚があったのに今作ではそれが感じられませんでした。

佃たちの勝利にしたって相手が勝手に自滅したようなものだし。。。

 

なんというか、『下町ロケット』の今までの良さが抜け落ちている気がしたので、ここがもったいなかったです。

 

 

『下町ロケット ヤタガラス』のまとめ

やや残念なところもありましたが、今作も安定の力作でした。

読んでいて興奮してくる小説ってなかなかないですよ。

 

今作は農業というぼくたちの身近かつ日本の重大な問題をテーマにしているところもよかったです。

ホリエモンの本でよく「将来農業もロボットがやるようになる」ってよく書かれているのですが、それがどういう仕組みでなりたっているのかということも描かれていて、最近の科学の凄さには震えました。

 

物語ではやや近未来的な内容になっていましたが、早くこれが現実のものになってほしくてなりません。

 

以上。少しでも参考になればうれしいです。