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歴史小説がこんなに面白いなんて!和田竜「のぼうの城」のあらすじと感想

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これが和田竜・・・!歴史小説がこんなにおもしろいなんて!!

ぼくをこんなにも興奮させたのは和田竜(わだりょう)のデビュー作である「のぼうの城」

デビュー作でありながら70万部を超えるベストセラーとなっている作品です

2012年秋映画化原作!戦国エンタメ大作

戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかに支城、武州・忍城があった。周囲を湖で取り囲まれた「浮城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約二万の大軍を指揮した石田三成の軍勢に対して、その数、僅か五百。城代・成田長親は、領民たちに木偶の坊から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。武・智・仁で統率する、従来の武将とはおよそ異なるが、なぜか領民の人心を掌握していた。従来の武将とは異なる新しい英傑像を提示した四十万部突破、本屋大賞二位の戦国エンターテインメント小説!

ぼくはいろいろ小説を読むんですが特に手をつけないジャンルが歴史小説。

昔読んだ宮部みゆきの歴史小説の内容がまるで理解できなかったし、大河ドラマを観ても「???」となることが多々あったため、歴史モノは合わないんだと懲りて手をつけずにきました。

しかし和田竜は2014年に「村上海賊の娘」で本屋大賞をとるなどかなりいい評判を耳にしたものですし、「のぼうの城」は内容からして面白そうだったので読んでみることにしました。

もうね、今まで読まなかった自分を殴りたい気分です 笑

こんなおもしろいのを読まないなんて何をしてたんだか。。。

「のぼうの城」は歴史モノに懲りていたぼくですら唸るほどにおもしろいと思えた傑作小説です。

この記事ではまず「のぼうの城」のあらすじを紹介します。

「のぼうの城」あらすじ

物語の舞台は戦国時代。

豊臣秀吉が天下統一を目前としており、残すは北条家が支配している小田原城をおさえるのみとなっていました。

秀吉が日本中の兵を率いて攻めようとしているにも関わらず北条家は秀吉側に屈することなく戦いの意志を示していて、関東各地の支城の城主に加勢を要請しました。

そのひとつが物語の舞台になる忍城(おしじょう)

主人公の成田長親(なりた ながちか)は忍城の領主・成田一門の武将で、当主である成田氏長(なりた うじなが)の従兄弟です。

長親は運動がさっぱりダメで馬に乗ることもできず、かといって戦の戦略をたてる”軍略”があるわけでもない。

農作業が好きでよく領民の畑仕事を手伝いにいくものの農作業もさっぱり出来ず、むしろ手伝わせたら作物をダメにしてしまう始末。

背が高い大男であることと、運動ができず農作業でも迷惑をかける不器用さから「でくのぼう」からとって『のぼう様』と呼ばれていました。

本人の前でも領民は「のぼう様」と呼んでいてその意味も知っていたでしょうが、本人はまるで気にせず笑っていました。

ある日、北条家からの加勢の要請を受けて忍城当主の成田氏長は手勢の半数ほどを引き連れて小田原城での戦いに向かいました。

しかし氏長自身は北条家に勝ち目がないと切り捨てていて、裏で豊臣家に降伏しようと画策していました。

それを知った忍城の重臣たちの一部は反発を示したものの、戦ったところで勝ち目はなく領民を危険にさらし無駄に死者を出すだけだと理解して、氏長の判断を受け入れました。

そこに秀吉からの指令で忍城を攻め落とすために石田三成が2万の軍勢を率いて忍城に攻めてきました。

氏長の秀吉への降伏の意思を知る忍城の重臣たちは、戦うことをせず降伏の意思を示すつもりでした。

しかし三成側から軍師(戦の交渉役)として遣わされた長束正家(なつかまさいえ)は強者には頭をたれ弱者には見下してた態度を示すタイプの男で、成田家が降伏しようとしていることが分かっていたため、成田家にとっては屈辱でしかない侮辱した態度をとり続けました。

その態度への屈辱に耐えながら成田家は頭を下げ続けましたが、長親がこの態度に怒りをあらわにして三成の軍勢と戦うことを正家に宣言。

成田家の重臣たちは必死に長親をなだめようとしましたが、最終的には長親の武士の誇りに溢れた言葉を受けて、長親を総大将として戦うことを決意します。

三成側の軍勢2万に対して、成田家は領民を含めても2000人という約10倍もの兵力差。

総大将である長親にはこれといった軍略の才があるわけでもありません。

しかし長親にはただひとつ、敵も味方も引き付けてしまうほどの人に好かれる才能を持っていました。

これこそが自軍の10倍もの軍勢に対抗する最大の武器となりました。

こうしてのちに「豊臣秀吉が唯一落とせなかった城」として名を残すことになる忍城での戦いが幕をあけました。

「のぼうの城」の感想

キャラクターが最高

10倍という圧倒的な兵力差に挑むというこの小説の設定は読者をワクワクさせる展開だし、ぼくはこれと”和田竜の作品”ということでこの小説を選んで読みました。

ただこの設定は特殊なものではないし割りとよくある王道の展開です。

ぼくが夢中で読んでしまったのはなんでなのか考えてみると、キャラクターがどいつもこいつも魅力的だったことに他ならないでしょう。

長親を支える家老である正木丹波(まさきたんば)・柴崎和泉(しばさきいずみの)・酒巻靱負(さかまきゆきえ)の3人や氏長の娘である甲斐姫(かいひめ)といった成田家の人物はもちろんのこと、敵である石田三成や大谷吉継、さらには領民までもが一癖も二癖もあるキャラクターで最高。

でもやはり一番は主人公である長親ですね。

「のぼう様」と呼ばれているもののバカにしているわけではなくみんな長親のことが好きであり、物語後半では敵側の兵まで魅了してしまうほどに人に好かれた男でした。

実際にいた場合ここまで好かれはしないでしょうが、長親がみんなに好かれていたのは分かる気がします。

なんというか可愛げがあるのです。

ぼくは読んでいて「友だちになりたい・・・」と思ってしまいました 笑

“でくのぼう”が”名将”に化ける

のぼう様と呼ばれても平然としているほどのんびりしていて、父親である泰親にも見限られているところがあった長親。

彼が総大将となって石田三成の軍勢と2度戦うのですが、初陣に成田家が勝利したのは丹波をはじめとした3人の家老がそれぞれ策を練ってうまく戦ったからであり、長親は特に何もしていませんでした。

ただ2度目の攻めに関しては丹波たちも打つ手がなくなっている中で長親だけが打つ手があるとし、突拍子もない作戦に出ます。

この作戦こそが危機的な状況を打開することになり、誰も知ることのなかった長親に潜む名将としての才覚が発揮された瞬間でした。

しかもこの作戦の裏にあった長親の意図がなんともたまらなくかっこいい。

最後の最後、長親は”でくのぼう”ではなく”名将”に姿を変えていました。

漫画的?事実と異なる?だから何だ

ぼくは今まで歴史小説は読みきることなく挫折してしまっているんですが、その最大の要因は物語がイメージできなかったことです。

漫画と違って絵がない小説では文章から物語の光景をイメージすることになります。

自分でイメージすることが小説の面白さだと思っているんですが、歴史小説は話が全然理解できず物語をイメージすることがぼくには出来ませんでした。

ですが「のぼうの城」は違います。

物語は分かりやすくスッと頭に入ってくるし、石田三成の軍との戦闘シーンなんかもすべての場面が鮮明にイメージできました。

物語にスピード感があるのでまったくダレることなく最後まで引き付けられたまま読まされてしまいました。

忍城での戦いは実際にあったものですしこの小説はその事実をもとに作られていますが、いくつか和田竜による脚色が加えられています。

たとえば長親は”でくのぼう”とされていますが、実際の歴史上にはこんな事実はなかったようです。

ただこういう脚色があると「事実と違うじゃないか!」と文句をいう人が一部にはいるようです。

またイメージがしやすいことを指しているのだと思いますが、和田竜の作風が「漫画的」だとして批判的な意見もあります。

でもそれがなんだというのでしょう?

「バクマン。」っていう漫画家を目指す漫画の中で『漫画は面白ければいいんだ。面白いものは連載される。当たり前だ』というセリフがありました

(うろ覚えなので正確にはちょっと違うかも)

小説だって同じことです。

漫画的だろうがラノベっぽかろうが作者に失言が多かろうが、小説が面白ければそれでいいんです。

和田竜の作品は歴史小説とは思えないほど読みやすく多くの人を引き付けています。

売れる作品にはちゃんとした理由があることが「のぼうの城」からはっきり分かるでしょう。

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「のぼうの城」まとめ

久しぶりに夢中になって読むことができる小説でした。

ここまで面白いとなると和田竜の他の作品も読んでみたくなります。

また読みたい小説が増えた。。。

ぼくはこの小説ですっかり和田竜ファンになってしまったので、あなたもぜひ和田竜の面白さを味わってみてください!