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【製作委員会なし】『チェンソーマン』はアニメ業界に革命を起こそうとしている

10月から放送されるアニメ『チェンソーマン』がヤバい。

原作は週刊少年ジャンプで連載され、11巻までで累計発行部数が1,600万部(アニメ放送前)という人気作。

『鬼滅の刃』『呪術廻戦』以上にグロい描写が多く、人もバンバン死ぬ。そのような作品であるため、アニメ化できた事態が奇跡とも言える。

そして極め付けは『チェンソーマン』にはアニメ制作で一般的な「製作委員会」がないということ。

制作会社のMAPPAが100%出資しており、まさに社運をかけた一大プロジェクト。そしてこの挑戦は、アニメ業界の構造をひっくり返す革命になりうるものなのだ。

今回は『チェンソーマン』でMAPPAが行おうとしていることを詳しく解説したい。

製作委員会の仕組みと存在意義

アニメを作る上では、製作委員会というものを立ち上げるのが一般的だ。

製作委員会は映像制作のための出資を複数企業から募るグループで、ドラマやゲームでも立ち上げられている。

作品によっても異なるが、具体的には以下のような構成である。

  • 出版社
  • 映画会社
  • テレビ局
  • 映画会社
  • 広告代理店
  • アニメ制作会社

アニメがヒットして収益が出た場合、出資額に応じて還元される仕組みだ。

つまり最も多くの出資をした企業が、最も多く利益が還元されるのである。

アニメは制作会社や出版社だけでなく、さまざまな企業の思惑が反映される形で作られているのだ。

アニメ制作会社の4割は赤字

製作委員会という形をとっている最大の理由は、リスク分散にある。

アニメ制作は儲からないビジネスで、制作会社の4割は赤字なのだ。
参照:https://www.j-cast.com/kaisha/2022/08/19444065.html?p=all

過去に『鬼滅の刃』を製作した会社が脱税を指摘されたことがあるが、裁判の際に社長はアニメ業界の悲痛な現状を訴えている。

「アニメ制作に求められるクオリティはどんどん高くなっていて、私もスタッフもそれに応えようと懸命に取り組んでいますが、クライアントから提示される制作費が安価なため、毎回、作品を作ると必ず赤字になる。

(中略)何で毎回、赤字の作品を引き受けて仕事しているんだろうと思いながら、ずっとやってきました。苦しかったです」

引用:脱税の「鬼滅の刃」制作会社社長が本人尋問で“驚きの発言” アニメ業界の構造的問題が明らかに

脱税は『鬼滅の刃』がヒットする以前の話だが、もともとクオリティの高いアニメを複数製作していた会社だ。

そんな会社であっても、アニメ制作のたびに赤字を計上するような状態なのである。

アニメ制作が赤字であるため、円盤やグッズが売れないと利益が出ない。

しかし放送や配信で話題になり円盤やグッズも売れる作品となると、非常に限られてくる。

ゆえにほとんどのアニメは利益につながっておらず、制作会社が経済的に追い込まれているのが現状なのである。

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「製作委員会なし」でアニメ制作を行う利点

製作委員会なしでアニメ制作を行なうことには、以下のような利点がある。

  1. 制作会社が規制なしで自由にアニメを作れる
  2. アニメの収益がダイレクトに入ってくる
  3. クリエイターの待遇面の改善につながる

順番に解説していく。

1. 制作会社が規制なしで自由にアニメを作れる

製作委員会方式により、アニメ制作において外部からの規制が入る場合がある。

複数企業の出資によって成り立っているため、アニメ制作においてもさまざまな思惑が入り混じる。

『チェンソーマン』は血しぶきのようなグロい描写が多く、人もバンバン死ぬ。

原作に忠実に作ろうとすると製作委員会の一部から異議が唱えられ、グロ描写が規制される恐れもある。

アニメで原作改編が行われることも多いが、その要因のひとつに製作委員会に入っている企業からの規制があるのだ。

しかし『チェンソーマン』は製作委員会方式をとっていないため、外部からの規制が入らない。

そのためMAPPA(制作会社)は、グロ描写も含めやりたいように『チェンソーマン』を作れるのである。

2. アニメの収益がダイレクトに入ってくる

製作委員会方式の場合、アニメの利益は出資額に応じて分ける仕組みだ。

出資額によっては、アニメ制作会社が得られる利益が少なくなる場合もある。

しかし製作委員会がなければ、アニメのヒットによる利益は直接制作会社に入る。

ヒットの規模によっては、莫大な利益を得られる可能性もあるのだ。

3. クリエイターの待遇面の改善

アニメ制作会社が儲かっていないということは、アニメを作るクリエイターの労働環境・待遇面の悪化にもつながっている。

利益が出ていないから、クリエイターに支払える金額も自ずと限られてくる。しかしアニメに求められるクオリティが高まっているため、負担は大きくなる。

クリエイターは少ない収入で重労働をこなすという、割に合わない状態でアニメを作っているのが現状だ。

しかし製作委員会がなければ制作会社に入る利益が増えれば、その分クリエイターに還元できる割合も大きくなる。

アニメがヒットし利益が出ることが条件ではあるが、業界が抱える問題の解消にもつながるのだ。

「製作委員会なし」のデメリットはヒットしなかった場合の損失

製作委員会なしでアニメを制作する最大のデメリットは、万が一ヒットしなかった場合の損失である。

通常は製作委員会で出資を募っているため、制作会社が負担する金額もある程度抑えられる。

しかし製作委員会なしならば、アニメ制作に関わるお金のほとんどは制作会社の負担となる。

通常より出資額が多い分、ヒットしなかった場合の損失は大きくなるのだ。

『チェンソーマン』の場合は、全12話のEDをすべて別々のアーティストが担当している。

単純に考えれば、通常の12倍の費用がかかっていることになる。

つまり『チェンソーマン』の場合は、半端なヒットでは許されない。社会現象レベルの人気にならないと、利益が出ないかもしれない。

『チェンソーマン』の社会現象化を心から願う

アニメ化の発表時にMAPPAは「スタジオの威信をかけて最高のアニメーションをお届けしたい」とコメントしている。

これは全く比喩などではなく、チェンソーマンはMAPPAが大きなリスクも抱え社運をかけて取り組んでいる一大プロジェクトなのだ。

製作委員会なしという方法がうまくいけば、アニメ業界の4割が赤字・クリエイターの待遇といった課題を解消できる可能性もある。

MAPPAはチェンソーマンを通して、アニメ業界のあり方に革命を起こそうとしているのだ。

今後のアニメ業界のためにも、チェンソーマンが社会現象レベルのヒットとなることを心から願いたい。