
去年バンド結成30周年を迎えたスピッツ。
スピッツのことをよく知らなくても日本中のだれもが知っているのが
- ロビンソン
- チェリー
- 楓
- 空も飛べるはず
これらの4曲です。
ファンとしては「これだけじゃないのに…!」という思いもあるのですがいい曲であることは間違いないし、老若男女問わず長年支持されているのはとんでもないこと。
スピッツ、半端ないって←
今やスピッツの4強ともいえる曲ですが、ファンだからこそ知っている秘話や魅力がいくつもあります。
そこでこの記事ではスピッツファン歴12年のぼくがスピッツの4強について思いっきり語ろうと思います。
無駄なものが一切ない「ロビンソン」

スピッツがブレイクするきっかけといえばロビンソン。
マサムネさんがタイに旅行に行ったときに止まったホテルの名前を仮タイトルでつけて、それがそのままタイトルになりました。
ファンには有名な話ですがメンバーはこの曲を「いつものスピッツの地味な曲」と思っていて、売れるとはまったく考えていませんでした。
だから初登場9位にランクインしたことも完全に予想外でしたし「どうしてこの曲が売れているんだろう?」と不思議に思っていて、売れた理由も未だに分析できていないようです。
ぼくが思うにこの曲はスピッツが一番肩の力を抜いて気楽に作っていたことが売れた要因です。
ロビンソンを作る直前までスピッツは売れることを意識して曲を作っていて、その結果アルバム「空の飛び方」が週間14位にランクイン。
スピッツはこの結果に満足して売れることにたいする意欲がなくなり、自分たちの音楽をマイペースにやっていこうという気持ちを持つようになりました。
ー どうせそんなにドカンと売れないバンドだったら、マイペースでやれるだけやってもいいじゃないか?
それで売れないんだったら、インディーズでやってもいい。
そんなふうに開き直る気持ちが出てきていた。
引用 旅の途中(スピッツ)
その直後に作りはじめたのがロビンソン。
なんでもそうですが、意識した直後が一番それをやれているものです。
ロビンソンを作っているころ、スピッツは一番肩の力を抜いて気楽にやっていました。
ロビンソンはとにかくシンプル。
バンドの演奏もギターのアルペジオ(イントロのメロディ)とマサムネさんのハイトーン以外はこれといって特徴的なものはありません。
メンバーが「地味な曲」と思っていたのもうなずけるところがあります。
ただこの地味なくらいのシンプルさはスピッツ最大の個性であるギターのアルペジオ、マサムネさんのハイトーンという2点を際立たせ、大きく印象付けることになりました。
正直この曲には他に聴くところがありません。
ロビンソンにおいて、アルペジオとマサムネさんのハイトーン以外は切り捨てられていると言っていいです。
また、当時は小室哲哉の曲がヒットを連発していたころで、中身がぎっしりつまった派手な曲が売れていました。
売れようと思えばみんなが乗れる派手で楽しい曲を作ろうとするのが普通です。
ところがロビンソンは派手さもなければ乗れる曲でもなく、時代の流れを逆行しています。
小室哲哉はロビンソンについてこのように語っています。
「みんなもちょっと『また小室の4つ打ち?』みたいなときに、スピッツのこの曲がフッときたら、「あ、気持ちいいな」って思うだろうなぁって。ぼくも思いましたから。」
売れる欲がなく自分たちらしい音楽を求めていた結果ですが、これが逆に時代にはまったのです。
このようにロビンソンのヒットは売れることに無欲で、自分たちらしさを追及して音楽をやっていたことによって生まれました。
スピッツは「なんでこの曲が売れたのか分からない」と言っていますがそんなの当たり前です。
こんな曲、計算で作れるわけがないですから。
「チェリー」に潜む奥深さはなんなのか?

ロビンソン同等の売り上げを記録したこの曲。
チェリーが出来たときマサムネさんは「また地味な曲作っちゃったな、こりゃ売れねえな」と思ったそうです。
チェリーはロビンソンに比べるとポップで華やかな感じはありますが地味さでいえばいい勝負。
ほとんど同じリズムパターンの繰り返しだし、サビだってなんともあっさりしたものです。
それなのにこの曲を聴くと温かい幸福感がこみあげてきます。
この曲には 「愛してるの響きだけで強くなれる気がしたよ」という歌詞があるため、聴いた感じラブソングのように思えます。
もちろんその解釈もあるのですが、それだけに留めないのが以下の歌詞。
二度と戻れない くすぐり合って転げた日
きっと想像した以上に 騒がしい未来が
僕を待ってる
この歌詞からは恋愛関係だけでなく、進学や新社会人などの新しい生活の始まりなんかも想像することができて、聴く人それぞれが自分の体験と照らし合わせることができます。
「愛してるの~」だって自分の大切にしている思い出にたいしての言葉とも受け止められますし、人以外のあらゆるものに当てはめることができます。
どんな体験とも結び付けられてなつかしさを感じさせる奥深さ。
チェリーは究極の青春ソングです。
「楓」で発揮される圧倒的な世界観

スピッツの曲の中でもミリオンヒット3曲に匹敵する人気をほこるのが「楓」
もともとはアルバム「フェイクファー」に収録されていた曲でしたが、シングルカットされてリリースされました。
最初からシングルとして発売されたわけじゃないんですね。
オリコン最高10位と売り上げ的にはミリオンにまったく及ばないのですが、ファンも含めやけに人気があります。
最近では「午後の紅茶」のCMで女優の上白石萌歌にカバーされたことで、音楽ストリーミングのランキングで一位を獲得するほどの再注目となりました。

名バラードとして何気なく聴いているかもしれませんが、この曲の奥深さはハンパじゃありません。
そのことについてかつて歌手の谷村新司さんがテレビ番組で話していたので、その話を紹介します。
まずこの曲を聴いたことがある人ならあることに気づかないでしょうか?
歌詞の中に「楓」という言葉が一度も出てこないのです。
タイトルが歌詞の中に出てこないというのは「ロビンソン」なんかもそうですが、聴き終えても「ロビンソンって何?」という疑問はさっぱり晴れないままです。
しかし楓はすべて聴き終わるころにはなんとなく「楓」という言葉がしっくりきます。
いったいなぜでしょう?
その秘密は歌詞の奥深さにあります。
楓という言葉は”きへん”に風で「楓」と書くもので、秋の季語に当たります。
「もみじ」のことでもあるのでこのタイトルからは無意識に秋を連想するでしょう。
それにも関わらず秋を連想させる言葉もないまま曲は進行。
しかし2番のサビの直前にこんな歌詞が出てきます。
風が吹いて飛ばされそうな
軽いタマシイで
この歌詞からはなんとなく秋の雰囲気を感じることができます。
一切秋という言葉を使うことなく、聴き手に無意識に秋の情景を想像させる奥深さがこの歌詞にはあらわれています。
さらにこれも谷村さんが話していたのですが、「楓」というタイトルが実は人の名前なんじゃないかと思わせる歌詞があります。
それがこちら。
瞬きするほど長い季節が来て
呼び合う名前がこだまし始める
聴こえる?
実はこの「楓=人の名前」というのはスピッツファンの間でもとても有名な説です。
雑誌のインタビューで話していたのですが、かつてマサムネさんが大学生の時、友だちが付き合っていた女の子が突然病気で亡くなってしまうということがありました。
また、その女の子はマサムネさんも好きだったようです。
その時友だちは当然ながらかなり落ち込んでいたらしく、その姿を見て「これが自分だったらどんな気持ちになるんだろうな」と思ったといいます。
楓というのは亡くなった女の子のことで、マサムネさんは好きだった女の子を亡くした悲しみを曲にしたんじゃないか?
ファンの間ではこのように考えている人もいます。
マサムネさん自身は歌詞の意味についてなにも話していないので、これはあくまでも個人の解釈でしかありません。
ですがこのように聴き手に様々な解釈の余地をあたえているのがスピッツの曲の奥深さです。
ちなみに楓(もみじ)の花言葉は「悲しい思い出」
かなり腑に落ちました。。。
スピッツが本気を出した「空も飛べるはず」

ドラマ「白線流し」の主題歌になって大ヒットしたこの曲。
発売自体はロビンソンの約1年前で、その時はオリコン28位で売り上げは5万枚ほどでした。
スピッツは当時お世話になっているスタッフへの恩返しの意味も込めて売れること目標に曲を作っていました。
マイペースに活動しているスピッツの数少ない売れることを意識した時期であり、「空も飛べるはず」はスピッツが本気を出して作られた曲です。
個人的なことをいえばぼくはこの曲をきっかけにスピッツを聴くようになりました。
イントロを聴いた瞬間に「なんていい曲なんだ・・・」と感動が込み上げてきたのをよく覚えています。
世間ではスピッツといえばロビンソンやチェリーが最高傑作っていう印象ですがそれは間違いです。
「空も飛べるはず」こそがスピッツの最高傑作。とにかくすべてにおいてずば抜けています
この曲の歌詞でもっとも印象的なのは「君と出会えた奇跡が この胸にあふれてる」です。
今までいくつもラブソングを聴いてきましたが、”好き”という感情をここまで的確かつ感動的にあらわした歌詞は聴いたことがありません。
売れることを意識した歌詞なんだとは思うのですが、そんな中にも「隠したナイフ」や「ゴミできらめく世界」などスピッツらしい卑屈で毒のある歌詞も失われることなくはさまれています。
独自の歌詞表現が高く評価されているスピッツですが、そのすべてがこの曲にあふれているといっていいです。
スピッツはロックバンドですが一般的にはポップスとして認知されていて、この曲もポップと思って聴いている人がほどんどでしょう。
しかしこの曲はポップスなんかじゃなく、完全にギターを主体としたロック曲です。
間奏のギターソロは普通にロックとしてかっこいいですし、イントロだって十分ロックとして成立するサウンドです。
サビなんてかなり重厚なロックサウンドです。
知っている人も多いと思いますが、この曲は音楽の教科書にも載りました。
ロック曲が教科書に載るなんて、他だと尾崎豊やビートルズくらいのもんです。
この曲はロックとしてはメロディがきれいすぎるんです。
スピッツのあまりの作曲センスがロックであることを感じさせずポップに聴こえさせてしまっています。
そのせいでスピッツは世間とのギャップに悩むことになるんですが、才能があるのも考え物ですね←
ちなみに「白線流し」の主題歌には最初から空も飛べるはずを希望していたわけではなく、スピッツは当初主題歌の依頼を断っていました。
依頼を受けるとドラマは1月にスタートするので2月に主題歌を発売というスケジュールになるんですが、当時スピッツは2月に別の曲のリリースを予定していました。
さらにどこともタイアップせずFMやラジオからリスナーの共感を経て広めていくという自分たちのスタイルがあり、計画を変更してまでドラマのために新曲を用意するということをやろうとはしなかったのです。
どうしてもスピッツの曲を主題歌として使いたかったスタッフは「新譜が難しいなら『空も飛べるはず』を」とお願いしたことから、主題歌になりました。
ドラマスタートと同時に話題になり「いつ発売されるのか」と問い合わせが殺到したそうですが、まさか2年も前に発売された曲だなんて思わないですよね。
2月には大量に増産され、店頭に並ぶこととなりました。
ちなみにスピッツが2月にリリース予定だった曲と言うのはチェリー。
しかし空も飛べるはずの思いがけないリバイバルヒットとなったことで、発売が4月に延期となりました。
スピッツの4強まとめ
こうしてみるとミリオンヒットは全部思いがけないヒットだったことになりますね 笑
売れると思ってなかったりドラマスタッフの猛プッシュによるものだったり。
こればっかり聴かれるのはファンとしては複雑ではありますが、こんなに長い間支持されて音楽の教科書にも載るのはとんでもないことです。
この4曲がある限りスピッツは廃業することなくバンド活動ができそうです。
それくらいスピッツにとって大きな曲です。
カバーでもなんでもいいから今後も聴かれ続けることを願います。
あ、他の曲も高クオリティなのばっかりなんで聴いてみてくださいね!