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2018書評

住野よる「青くて痛くて脆い」のあらすじと感想。感情のぶつかり合いの果てにあるものは?

昨日住野よるの最新小説「青くて痛くて脆い」が発売。

ぼくは「君の膵臓をたべたい」で大号泣したほどなので、この本もとても楽しみでした。

 

 

今までの作品はどこか非現実的なところがありましたが、「青くて痛くて脆い」は大学を舞台にしたものすごくリアルな物語です。

誰もが一つは持っているであろう人とのつながりのトラウマをついてくる作品で、後半は特にセリフのひとつひとうが突き刺さります。

 

なにかと「膵臓」で話題になる住野よるさんですが、もう作家として次のステージに進んでいます。

 

著者の住野よるさんとは?

先日本屋で友達に「今この本を読んでる」と紹介したら「これ、膵臓の人だよね?」と言っていました。

住野よるという名前は有名ですが、多くの人には「膵臓の人」という認識でしょう。

しかしまあ、膵臓の人ってなんだ 笑 

 

高校時代より執筆活動を開始。もともとは電撃小説大賞に応募していたが、一次選考に通らず、作風を見直して書き上げた「君の膵臓をたべたい」は、応募規定よりも長くなってしまい投稿できなかった

 

他の賞に送るも結果は振るわなかったが「この作品だけは誰かに読んでもらいたい」という想いから、2014年2月ごろ、夜野やすみ名義で、小説投稿サイト「小説家になろう」に「君の膵臓をたべたい」を投稿。同作が話題となり、双葉社から書籍化されデビューするに至った

 

好物に「パピコ」、「よなよなエール」などをあげている。ペンネームの由来については、「教室のすみっこにいるような子の夜に創造性があるはずだという意味が(後付けだけど)」と語っている

引用 住野よる – Wikipedia 

 

ネットで小説を発表し話題になったことでデビューしていて、新人作家の登竜門である新人賞の受賞経験は一切ありません。

「君の膵臓をたべたい」のイメージが強いですがその後に出した作品はどれも20~40万部売れていて、10代を中心に支持を集めている作家です。

 

作品のおもしろさはもちろんのこと、読みやすい文章で書かれているので普段小説を読まない人も引き込んでいます。

「ラノベっっぽい」という批判的な意見もあって確かにそうだなとぼくも思いますが、そもそもラノべっぽいことの何が悪いんでしょうね?

 

膵臓は「これで売れなければ一生ダメだろう」というくらいの思いに追いつめられた中で生み出された作品のようです。

他の作家でも東野圭吾や小川糸も最後のつもりで書いた作品が評価されて人気作家になっているので、あきらめずに書き続けることは重要なんですね。

 

 

こちらのインタビューで「青くて痛くて脆い」の誕生秘話や作家としての苦悩も語っています。

 

kadobun.jp

  

乙一:どういった発想で、こういう内容のものを書こうと思われたんですか?

 

住野:この小説は初めて、「どんな話にするか?」という段階から担当さんと作っていったものなんです。担当さんは二人いるんですけど、まず最初に「二人だけの秘密結社が読みたい」というリクエストがあって。なんだそれと思ったんですけど(笑)、そこから三人で話し合っていくうちに「誰かの嘘を本当にする」というキーワードが出ました。

(中略)

住野:僕自身の話でいうと、この小説を書き始めたのは去年の一月ぐらいだったんですね。『君の膵臓をたべたい』の単行本が何十万部かになって実写化も進んでいて、自分の想像を超えて大きなものになり始めた時期だったんです。

 

文庫化されてまたどんどん大きくなっていった時期には、「住野よるをやめよう」と思ったこともありました。そういった気持ちの反動で、『膵臓』という作品を、好きだと言ってくれている人たち込みで殴り倒してやろうと思ったんですよ。

 

「膵臓」はあまりにも売れたためによくも悪くも住野よるの代表作となりました。

そのイメージをぶっ壊してやろう!

「青くて痛くて脆い」はそんな気持ちで書かれた作品です。

 

「青くて痛くて脆い」のあらすじ 

人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。

空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。

それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。

「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」
それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた――。

 引用 https://www.amazon.co.jp/青くて痛くて脆い-住野-よる/dp/4041052068/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=

 

 

 「あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある」

そんな考えを持っていた大学1年生の主人公田畑 楓(たばたかえで)。

 

不用意に人に近づかないこと、誰かの意見を真っ向から否定しないことを自分自身のルールとし、なるべく人と関わらない大学生活を送ろうとしていました。

 

そんなとき授業で「質問いいですか?」と手を挙げ空気を読まない発言を続けて周りからうっとうしく見られていた秋好寿乃(あきよしひさの)と知り合います。

 

最初は痛いやつだとバカにしつつも拒絶することもできず仕方なく関わっていましたが、次第に自分にはない青さや痛さをもった彼女を信頼するようになり、友達として関わるようになっていきました。

 

「そういえばさ、私のことは受け入れてくれてありがとうね、楓」

出会ってだいぶ時間が経ってから、確かどこかの美術館に行った帰り、突然、そんなことを言われた。

 

「何が?」

「いや、楓さ、生きるうえで人を傷つけないために、人に近づかないようにするって決めてるって言ってたじゃん?だったら最初に声かけたときに嘘ついて断ってくれてもよかったのに、友達になってくれてよかった。いやあ、楓がいなかったら寂しい大学生活になってたよー」

 

このときになると、なんて恥ずかしいことを、と、もう思わなかった。

そういうことを思い、言える、秋好はそういう友達だった。 

 

その後、秋好は「四年間でなりたい自分になる」という目標を実現させるための学生団体を作ることを決め、二人で「モアイ」を結成。

 

目立つことを好まない楓の意思を尊重して、最初は二人だけの秘密結社としてはじまりました。

といっても、楓は秋好の言うことに反論できずに引き込まれた形です 笑

  

三年後、「モアイ」は理想と信念を失っていた

二人の間で口約束としてはじまったモアイですが、目標期限の四年が近づくころにはすっかり変わってしまっていました。

 

二人だけで活動していたのが興味をもってくれる人があらわれたことでメンバーが増え、大学からも評価されるようになっていきます。

 

その一方で結成当初の「なりたい自分になる」という目標からはかけ離れていき、社会人とコネを作るようなイベントばかりで就活サークルまがいの活動をするようになっていました。

 

さらに大学の講義よりもモアイの活動を優先して他の学生に迷惑をかけたり、外でも大学代表のように振舞っていることから「気持ち悪い団体」と大学内でもよく思わない人が増えていました。

 

そして設立メンバーである楓は今のモアイと違う理想をかかげていることからメンバーから外れていて、秋好はもうこの世界からいなくなっていました。

 

楓はモアイを作った当時言っていた秋好の言葉がウソになっていることがずっと心の中に残っていました。

秋好が言っていたことを本当に変えるため、楓はモアイをもう一度作り直すために活動を停止させようと動き始めます。

 

なお、秋好が「この世界からいなくなっている」ということですが、これが物語において重要な意味をもっています。

 

というのも、「この世界からいなくなっている」ということについて大きな勘違いをしたまま読みすすめていくことになるからです。

 

そして物語の終盤、具体的には196ページで勘違いの意味に気づいたところから、物語は一気にドス黒い感情をまとって進みはじめます。

 

正直にいえばここにいくまではあまりはまっていませんでした。

特に気になっていたのが楓がモアイのスキャンダルをつかんでネットで炎上させて活動を停止させようとしていること。

 

今のモアイが当初の理想と違うものになっていてそれが許せないのは分かるんですが、だからってどうしてそこまでするのか全然分からなくて共感できませんでした。

 

しかし「この世界からいなくなっている」という言葉の意味が分かったとき、楓がなにをそこまで許せないのかが見えてきました。

 

この後からの加速感がすごく、ぼくは続きを読むのを我慢できずにそのまま最後まで読み終えてしまいました。

おかげで完全な寝不足です←

 

「青くて痛くて脆い」の感想

にじみ出る憎悪の感情、それでもページをめくる手が止まらない理由

物語の構成は思っていたものとは違いますね。

てっきり最初に秋好がいなくなってしまうまでを書いてその後に三年後のことを描いていく二部構成の話だと思ってましたが、過去と現在を交互に描いています。

どっちかというと、三年後のほうが中心です。

 

 

物語は現在の話を中心に過去の秋好との会話を回想しながら進んでいきますが、終盤は楓とモアイの現リーダー「ヒロ」を中心に展開されます。

ちなみにヒロは男ではなく女です。

 

楓はヒロにとてつもない憎しみを抱いています。

 

久しぶりにその姿を見て、脳より先に体に異変があった。

寒気のようなものを感じ、鳥肌が立つのが分かった。寒いのに背中を汗が伝った。思わず握りこんだ拳に、爪の後が残るほどの力が入っていた。吐き気もした。(中略)

これが多分、本物の嫌悪だ。(中略)

 

数メートル後ろに、僕らからモアイを奪った張本人がいる。

実在すると実感し、初めて、人は対象への感情を真剣に抱くことができる。

奴こそがモアイを統べる人間で、僕と董介にとってのラスボス。理想を捨てたモアイ、ねじ曲がったモアイを肯定し、運営してきた人物。

ヒロと呼ばれる、現リーダー。 

 

最終的に楓はモアイに決定的な打撃を与えて、ずっと会っていなかったヒロと二年半ぶりに言葉をかわします。

楓はモアイをねじ曲げられたことで、ヒロはモアイに大打撃を与えられたことでお互いに嫌悪感を抱いていたので、人格否定・人間否定の罵詈雑言を浴びせあいます。

 

楓の言っていることはかなり身勝手なもので、どちらかというとヒロの言っていることのほうが正しいとは思いますが、彼女も非難されても仕方ないことをしています。

とにかく読んでいて気分がいいものではありません。

 

でもぼくが感じたのはどうしようもない悲しみでした。

二人はもともと一緒に行動するほど仲がよかったので、その二人の関係が壊れていく過程を見ているのは悲しくて仕方ありませんでした。

 

それでもページをめくる手が止まらなかったのは壊れてしまった二人の関係が元に戻るんじゃないかという期待と、戻ってほしいという思いがあったからでした。

 

 

残念ながら壊れたものがもとに戻ることはなかったです。

でも最後に楓は今までなら絶対にしなかったある行動を起こします。

それはかつて自分が秋好にしてもらったことと同じで、楓が新しく見つけた人生のテーマと関係するものでした。

 

後半まで読んでいて「これは感動できるのかな?」と疑問に思いましたが、そこはやはり住野よるさんでしてちゃんと希望がある感動的な結末で終わりました。

 

住野よるの最高傑作?

 

住野よるさんは最高傑作と言っていて、「『膵臓』で感動してくれた全ての人の心をこの本で塗り替えたい」とも語っています。

 

残念ながら「膵臓」で感じたほどの感動はなかったので「膵臓」のほうがおもしろかったかなと思います。

 

ですが「青くて痛くて脆い」は登場人物の心理描写という面では最高傑作といえる出来栄えです。

「膵臓」よりはどちらかというと心理描写が細かい「また、同じ夢を見ていた」に似ているんですが、「青くて痛くて脆い」のほうが心理描写の巧みさが圧倒的に上です。

 

小説としての完成度が高いので、住野よるさんが最高傑作と言い切るのも納得がいきます。

今までラノベっぽいと否定的に見ていた人はぜひ読んで確かめてみてください!

 

 

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リュウ
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月間最高4.4万PVのブログ「World's Endで手を繋ぐ」を運営するブロガー /どこまでも続く一生を世界の果てまで好きな人と共に歩いていく過程を発信(予定)/ 恋愛偏差値は0/ スピッツが大好きでファン歴12年目 / 26歳現在彼女なし / マッチングアプリを中心にした恋活を実況中継