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富山の吹奏楽団に所属するTuba吹き。音楽を演奏するのも聴くのも好きな「no music no life」な人間。スピッツファン歴は12年。小心者でビビリながらも興味のあることは何でもやってみるタイプ。

佐藤正午「月の満ち欠け」のあらすじと感想②。『前前前世』がよく似合う大人の純愛物語

こんにちは、リュウです。

前回に引き続き、「月の満ち欠け」の感想を書いていきます。

 

 

 

「月の満ち欠け」の感想

 

生まれ変わりが本当にあるんじゃないかと思えてくる

「月の満ち欠け」は生まれ変わりが重要な要素となっています。

物語の中の会話によると世界中で前世の記憶が残っていることを思わせる事例がいくつも報告されているらしいですが、それでもかなり非科学的なものです。

 

 

生まれ変わりも含めてフィクションなのですが、読んでいると段々これは本当に起こりうる話なんじゃないかと思えてきます。

生まれ変わりはぼくたちの身の回りでも起きていて、その兆候を見逃しているだけじゃないかと思わせる説得力があるのです。

 

ぼくは色んな小説を読んできましたが、表現の上手さとかそういうのはよく分かりません。

だから感覚的にしか言えませんが、「月の満ち欠け」の文章にはなんだか不思議な力があります。

 

描かれている場面はほとんどがぼくたちが日々送っている日常と変わらないものでしたし、心理描写が鋭いとか際立ったものは感じませんでした。

普通の日常を描いているのに文章に引き込まれていくのです。

 

 

生まれ変わりが本当にあるんじゃないかと思わせられるのも佐藤正午さんの文章力によるものなんでしょう。

キレイな文章、でもそれだけじゃない奥深さがあるのが特徴です。

 

 

生まれ変わりにちょっと無理がある

27歳で死んだ瑠璃が生まれ変わって前世での恋人に会いに行こうとするのですが、運命のイタズラとでもいうのかなかなか会うことが出来ません。

 

あとちょっとで会えるというところまでいっても何らかの障害がおきて、次のチャンスまでは年単位の時間がかかってしまいます。

 

内容紹介には『戦慄と落涙のラスト』って書いてあるので一体何が起きるんだと思いましたが、特に戦慄するようなこともなく誰もが期待した通りであろうラストを迎えます。

 

 

ですが落ち着いて考えてみると、この物語の生まれ変わりはちょっと無理があるような気がします。

 

前述したとおり生まれ変わりはほんとにあるように思わせられるし、非科学的だとかそういうことを言っているわけではありません。

ただ単に「ちょっと厳しいかな・・・?」という程度です。

 

細かいところが気になってしまうのはぼくの悪い癖です。

こういうところがなければもっと小説を楽しめるんでしょう←

 

 

瑠璃の行動が怖い?

この記事を書くにあたって他の人はどんな感想をもったのかを調べてみたのですが、純愛として感動する人が多い一方で、生まれ変わり後の瑠璃の行動がストーカーじみてて怖いという意見もありました。

 

ぼくは普通に純愛として受け止めていたので、そんな感想があることにびっくりしました。

むしろストーカーじみてて怖いのは「正木竜之助」の方じゃないですか?

 

うーん、純愛と受け止めるかどうかについては評価が別れるところなのかもしれませんね。

 

 

「月の満ち欠け」の考察(ネタバレあり)

戦慄と落涙のラスト』っていうのを意識して読んでいたので、「これって戦慄のラストの伏線じゃないか?」と思うところがいくつかありました。

 

結局はぼくの想像した展開にはならなかったのであくまで想像の範囲ですが、こういうことも考えられるんじゃないでしょうか?

 

ここからはネタバレがあるので、未読ならスルーしておいてください。

 

 

正木竜之助の死

瑠璃の前世での夫だった正木竜之助は女児誘拐の罪で逮捕されたのち、刑務所の中で亡くなりました。

短い遺書のようなものも残されていたといいます。

 

詳しいことは語られていないので分かりませんが、遺書のようなものがあったのなら自殺の可能性があります。

そして遺書に書かれていたのはかつて自殺した同僚が書き残した「ちょっと試しに死んでみる」というのと同じようなことだったんじゃないでしょうか。

 

 

瑠璃は正木が知る限りでも2回生まれ変わっています。

2回生まれ変わっているのならもう一度生まれ変わる可能性があると考えてもおかしくはありません。

 

正木は瑠璃が生まれ変わってくることを確信して、自分も生まれ変わろうとしたのではないでしょうか。

瑠璃に会うため、というよりは自分の妻を寝取った三角への復讐の気持ちからです。

 

ですがもしそうだったとしても正木は生まれ変われないのではないかと思います。

 

瑠璃の他に小山内の妻である梢も生まれ変わっていると思われますが、二人に共通しているのは前世で恋人・夫に深い愛情を抱いていたということです。

 

正木はどうかというと浮気もしていますから、本当に瑠璃のことを愛しているか疑問が残ります。

それよりも自分の人生を壊された(と思っている)ことで瑠璃と三角にたいする憎しみのほうが強いです。

 

だから正木は生まれ変われないし、瑠璃と再び会うことはもうないだろうと思います。

 

 

三角はなぜ約束の時間にあらわれなかった?

前世の瑠璃の恋人である三角は約束の時間を一時間半過ぎてもあらわれず、物語のラストまでリアルタイムでは登場しませんでした。

 

物語の冒頭で三角は仕事を抜けて約束のカフェにやってくる予定だということが明かされているので、ただ単に仕事が終わっていないだけかもしれません。

 

ですが瑠璃はあと一歩のところで三角と会えないということが何回もありました。

今までは瑠璃が事故に会って命を落としたことが原因でしたが、同じことが三角にも起きないとは限りません。

 

 

三角があらわれなかったのは彼の命にかかわる何らかのトラブルがあったのではないでしょうか?

一時間半という遅れは三角の身に何かあったとしても不自然ではありません。

 

しかしもし三角が死んでしまった場合、このまま終わるとは考えられません。

瑠璃も小山内にたいして「生まれ変わりは私だけとは限らない」と言っていました。

 

三角も瑠璃に強い愛情を抱いていますから、瑠璃と同じように月のように生まれ変わるでしょう。

 

そうなった場合、瑠璃はこの時点で7歳だったのだから三角との年齢差は7歳です。

二人は再び7歳差の状態で出会って、前世のときと同じように恋人として付き合っていけます。

 

 

物語のラストでは三角と瑠璃の年齢は50歳以上離れています

とても恋人として付き合っていける年齢ではありません。

だから三角も生まれ変わって瑠璃と再会するっていうほうが理想的な展開じゃないかと思うのですがどうでしょうか?

 

 

「月の満ち欠け」まとめ

正直にいうとぼくは純愛物が苦手です。

あまりにもキレイすぎてファンタジーめいているというか、恋愛っていう誰もが経験するものを描いているのに現実感がなさすぎると思うんですよね。

 

そんなぼくですが「月の満ち欠け」は十分すぎるほど楽しめました。

今後はあまり読んでいなかった恋愛物を読んでみるのもいいかもと思えました。

 

恋愛小説を読むことが少ない人にこそ「月の満ち欠け」はおすすめ。

貴重な読書体験になること間違いなしです。

 

 

 

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